マイレア邸~建築の本来の意味や方向を示す愛情溢れる住宅~

この住宅はフィンランド西海岸方面にある郊外、ノールマルックに位置します。敷地は小さな川沿いの小高い丘の上、森に囲まれて建っています。フィンランド特有の垂直な木立が立ち並んでいて、落ち着いた雰囲気の場所ですね。隣家との距離がとても離れているので、回りは木立しか見えません。

緩やかな斜面となっている森の小道を登りながら進んでいくと、木立の間に白い箱のような建物が見えてきます。住宅の南側ファサードになります。レンガ積みを白く塗り込めた外壁のほかには、木板張りとなっていて、そのコントラストが印象的です。敷地と調和した静かで端正な佇まいになっていますね。

2階を見上げると、斜めになった出窓が並んでいます。庭側へ回ると一気に視界が開け、北側にプールのある広い庭があり、その南側には東西に長いのボリュームが配置されています。東端には北側に食堂やキッチンなどの部分が張り出していて、住宅は全体としてL字型のプラン構成となっています。このL字型の配置が、表側は閉鎖的、裏側に対しては開放的になっています。お、小屋がはなれみたいにあります。サウナ小屋とのことです。家とサウナは通路というか屋根つきテラスでつながっていて、通路の天井部分は芝土で覆われています。とても気持ちよさそうです!

玄関前のポーチでは、自由な曲線をもつ水平な庇が前面に突き出ています。それを支えるために束ねられている柱は周辺の森林との連続性を内部へと導くデザイン要素となっています。細い木を束ねたものもあって、それがスクリーンのような働きも担っています。 これらは建築家の考えにある、森の連続性をつくるためのものとして、建物の内部にも用いられています。

玄関扉を開けると、まず狭い空間にトップライトの明かりが印象的な空間が出迎えてくれます。そしてもう一枚扉を開けると、視界が開け、この建物の中心となっているリビングダイニング部分に出ます。

南側と暖炉のある北側の2つのリビング空間は分節されることがなくゆるやかに連続していて、各部屋は有機的に広がりながら一段下がった玄関につながっています。リビング空間と玄関と食堂をゆるやかに分節するのは、日本の竹をモチーフにしたといわれている木製の丸棒です。この住宅の中心に配置されている、ランダムな柱の配置に囲われた階段もこの丸棒で覆われています。書斎の欄間は複雑なカーブを描いていますね。その欄間からは、ここちよい光が漏れ、放射状の光がパターンとして描かれいています。西側のフラワールームは、柱に巻かれた籐をはじめ、籐の家具と生い茂る植物など、非本的というか、アジア的なデザイン要素の見られる素材が見られます。

これら家の中に入ることで感じる森っぽさは、外部との連続性としてみえるだけでなく、空間にやわらかさや豊かさ、そして奥行きを与えているような気がします。そしてこれらのデザイン要素は、この住宅には日本の影響を多く受けているということを教えてもらいました。これが私がこの住宅建築を最初に興味をもったきっかけにもなっています。しかしながら、伝統的なレンガ積みの壁や、木製の天井、白い暖炉やそこにある遊び心ある彫刻的なニッチなどには、しっかりとフィンランドという土地に根付いたアイデンティティーを感じますね。

私が学んできたモダンな建築では、なにか過剰なほど全体の統一性や秩序を優先しがちになってしまっていています。私自身も、それが体のどこかにしみついてしまっていて、その秩序からはずれた建築のよさを捉えることには、最初は躊躇していたときがありました。そうではないんだよ。そう教えてくれた最初の建築がこの住宅だったような気がします。この建築は、純粋により空間のここちよさと住む人への愛情が空間として表現されていて、住空間をつくるお手本となるようなものがつまっています。それがほんとうは建築という存在なんだろうなあ。

建築:マイレア邸

設計:アルヴァ・アアルト

建築作品をみた雑誌等:アルヴァ・アアルト光と建築(petit)、GA67 アルヴァ・アアルト マイレア邸

建築のある場所:フィンランド、ノールマルック

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