越後松之山「森の学校」キョロロ~森を再生する散策路建築~

この建築は、新潟県の松之山という山の中にあります。ここは日本有数の豪雪地帯です。この地域は、冬になるとものすごーく雪が降ります。毎年深さ56メートルくらいの積雪になります。この人と自然が共存している里山。ここはそのような日本の原風景が色濃く残るこの場所で、里山の自然と文化を学芸員や研究員らが地域住民と共に調査・研究し、地域の魅力と不思議を楽しく展示していく施設です。ちなみに「キョロロ」というなんともかわいらしい名前は、旧松之山町の町の鳥であったアカショウビンの鳴き声が「キョロロ~」と聞こえることに由来しているそうです。

建物の長さは塔の高さもふくめておよそ160メートル、外壁は全溶接の鉄板でおおわれています。

いわゆるエキスパンションジョイントを一切使わないモノコック構造になっています。冬は深い雪の下で潜水艦のごとく重さ2000トンの加重に耐えることができます。たしかに潜水艦みたいな、いやもう森の彫刻みたいな建築ですね!断面形状は、周辺の雪の覆道をイメージしているとのこと。なるほど似てるな!その鉄板、具体的には耐候性鋼板、コールテン鋼などと呼ばれていますが、その茶色い外壁からなる外観は深い森のなかにある遺跡のようにも見えます。これら外壁材は、錆びているといっても表面だけで、その錆が保護膜となって内部まで腐食しないものとなっています。この耐候性鋼板の胴体は年月とともに、耐候性鋼板独特の茶色の縞模様を完成しつつある。味わいがでてきています。

この大蛇のよう長~い平面は、敷地周辺を巡る散策路をイメージして検討を行ったなかで、内向きの展示室に向いたものではなく、周辺の自然や風土といった外に向いた結果でたかたちとのこと。博物館というプログラムは、中に空間があって、そこに展示してあるものを見せるものです。しかし、ここはそうではなくて、この建物は何かを発見するために、道をたどるような建物にしていこう。そういういう設計意図で、この場所にあうようなまるで畦道のような建築平面にしていったわけです。このトンネル断面が場所によって異なるのは、立ち止まって自然を観察するところは空間を広く太くとって、通り抜けることが多い空間は、細くなっていることによります。

建築の片端には高さおよそ34メートルの塔がくっついています。塔からは、越後三山の山並みが見えます。訪れたとき、みなさん楽しそうに塔に上がっていましたよ。もちろん私も喜んで上がっていきましたww。そこには宇宙から落ちてくる宇宙線をキャッチして信号に変えるという装置があります。あ、摩訶不思議なことを言ってすみません(笑)。これらは逢坂卓郎さんというアーティストの作品です。その信号を建物内部に落とし、発光ダイオードで表現しています。不思議な塔の空間になっていましたね。塔の途中には窓があって、いろんな高さで周辺の自然風景を観察することができます。

冬場の時期の建築も訪れると、とてもおもしろいようです!建築のいくつかに設けられている大きなアクリル窓からは、雪の断面が見え、そこには普段は見ることのできない雪の下に生きている生物を観察することができます。そして晴れた日には雪を通した独特な光が建物内に降り注がれます。雪って中にいろんな生物がいたりするんですね!

トンネル状の建築とは裏腹に、このアクリル窓は、建物に開放的な方向性を与えています。大きな窓は、内外の境界を曖昧にするとともに、ガラスとは異なる光の屈折が独特な関係性を生み出しています。夏は周辺のブナが生い茂る林をうつします。しかしアクリルってのは本当に透明ですよね。普通は厚いガラスを使うといろいろな金属物質を含んでいるからどうしても色がついていますけどね。緑色とかになってしまいます。ちなみに建築同様この窓も雪の圧力に十分耐えられるようになっています。

この建築に隣接するおよそ80haのキョロロの森。この森では、四季によっての自然観察会や森づくり、そして棚田再生といった里山保全活動が行われていて、多様な交流の場を生み出していきます。私がこの建築を訪れたときは、越後妻有トリエンナーレがあるときでした。また行ってみたいな!

建築:越後松之山「森の学校」キョロロ

設計:手塚建築研究所+武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部建築学科手塚研究室

建築作品をみた雑誌等:新建築20038月号

建築のある場所:新潟県

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