枡屋本店~シンプルな空間操作から生まれる有機的な空間~

この建築は、小型農機具のためのショールームになっています。建築家は、人が本能的に興味を感じる自然環境のような場所を建築空間としてつくりだしたかったとのことです。それはたとえば、サンゴ礁に魚がひきつけられるような、そんな自然環境を建築的に作り出すことはできないかを考えたのだそうです。

しかしながら、建築は平面的に見ると、5メートルグリッドのコンクリート壁からなる単純なプランとなっています。なんかプランだけみると自然環境というものとは程遠いのでは。と感じてしまいます。でも、この建築を立体としてみてみると、おもしろい空間になっているんですよね~。そのコンクリート壁は、折り紙のように斜め45度にカットされていて、その壁が連続して空間を構成しています。その斜め壁は、見えたりみなかったりと、歩いて移動していくとその空間のシークエンスは豊かに展開していきます。単純な空間操作で、意外にもこんな変化に富んでいて、なかなか複雑なシーンをつくりあげています。これはいい!平面的には単純でも、45度振れた斜めの開口が、水平・垂直の秩序とはまったく違う世界をつくり出しています。なぜかこの建築は幾何学で構成されているのに有機的なんですね~。空間としては三角形の壁面が視野に入るために、半分閉ざされた空間として全体が連続します。これは、単純な平面と断面ではなくて、空間を3次元で捉えることで建築を構成することに見事に成功しています。

遮断されているわけではなく、つながっているわけでもない。閉じてるようで閉じてない。この斜め壁からなる間仕切りというか境界は、とても曖昧な空間を生み出しています。内部を歩くとそれらが立体的に展開しています。遠くのラインはゆっくり、近くのラインは早く動いているように見えます。その重ね合わせの空間は、予想していたよりも複雑な効果を生んでいます。すげえよ!複雑な距離感を内包した一体的な空間、プランというツールに縛られない動的な立体性を持った、身体感覚に近く寄り添ったような空間の試みは単純ながらドラマティック!そこには奥を見通すことのできない、何とも不思議な奥行きのある連続空間となっています。

人を奥へ奥へと誘い込む魅力を帯びた空間。少しずつ見え隠れしながら層をなしてその奥行きを作り出している空間。人はその奥へと誘い込まれながら、その変化による小さな発見を繰り返します。展示されている機具は立体的に空間で包装されているかのように感じます。しかし、人が移動することで視点が変化して、その包装はとかれるわけです!コンクリートという重いものが軽くもみえて、躯体が浮いているようにも見えるので、それがまた内外の連続性をつくりあげているようにも感じますね。

単純で明快な空間のシステムの連続なのに、それが豊かな空間体験をもたらし、内部と外部が渾然と一体化した場所となっています。原型的な空間からの展開がおもいもしない奥行きを生んでいるし、その発見はとてもここちよいものではないでしょうか。あ、でも商品の陳列とあってるかはなぞ、私にはわかりません。何はともあれ、この空間を農機具のショールームとして採用していただいたお施主さんの器の大きさにあっぱれ!

建築:枡屋本店

設計:平田晃久建築設計事務所

建築作品をみた雑誌:新建築20071月号

建築がある場所:新潟県

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