カーサ・ダ・ムジカ~ホールの概念を変えた都市に向けた多面体~

ポルトガルのポルト中心部、北西のボアヴィスタ通りのロータリーに面して建つこの建築は、ポルトがEU文化首都(2001年)に定められたことを記念して建設されました。当時ポルトガルでは初めての音楽専門の施設だったそうです。ちなみにカーサ・ダ・ムジカは「音楽ホール」を意味します。国際指名コンペを勝った建築家OMA/レム・コールハースによって設計され、完成した2005年から多くのメディアに取り上げられています。私も当時からかなりこの建築家のファンでしたので第注目していました!

カーサ・ダ・ムジカ駅から歩くこと数分。ちなみにこの駅の設計はポルトガルを代表する建築家アルヴァロ・シザによるものです。彼の建築もすばらしいんですよ。いつか紹介しましょう!話がそれました。それでですね、歩いていくと突然、街の中に現れる独特のフォルムに、「おおっ!」となります。だって、ポルトの歴史的な街並みの中にこんな鉱石のような多面体の建物。これほんとにホール?みたいなかたちですから。びっくりするでしょう。でもこの建物は、圧倒的にオブジェ建築として存在してるだけではないんですね~。

実は最初はこのかたちの案、私は以前見たことがありました。建築家がこの建築を提案する前に、家の提案で使われていたんですよね。だから家の設計でやりたかったかたちをこの施設でやりたかっただけなんじゃねえの?みたいに思っていたんですが。ですがね、これ、意外とはまってます!

コンサートホールという施設において建築家が考えたこと、それは、多くの人々はその大きな施設を外観だけみていて、その施設の内側で行われていることを知ることのできるのは少数の人々だということです。そこで建築家は、コンサートホールの内外を関係づける設計をおこないました。

かんたんにいうとホールを建築の中心に配置して、そのまわりをポコポコっと空間をくりぬいています。そのくりぬかれた余白空間は、都市つまり外にいる人々に建物を向けた空間として構成されています。そこにはホワイエやレストランなど、施設を補助するプログラムのものとなっています。それらが立体的な動線となってぐるぐると回遊できるように配置されています。外観も内部は変化に富んだ構成ですが、動線の要所に設けられた窓から見える周囲の様子で自分の位置関係がけっこうわかりやすく、何気に空間構成が明快に感じてしまいますよ。さすが!

さらにコンサートホールの背後からは開口をとおしてポルトの都市が見えます。また動線空間からはホール内部の様子がばっちり見え、タイミングによってはポルトの管弦楽団が練習している様子がたまに見ることができます。もちろん音楽も聞こえます。お金払っていないのにそんな体験ができるなんて贅沢ですね~。こんなホール空間ありますか?空間を徘徊しながらホール内部を散見できる施設なんて。まあ、めずらしい。ホールは密室ではなかったのだ。これって革新的ですよね。

そんなプログラムの配置の絶妙さ、現代建築のいいところってこれなんじゃないすか?言い方が乱暴かもしれないですが、無料の空間をつくることで、なんとなく関係ない人が立ち寄れて興味をもってもらう。建築というちょっと力で建ったような権力や圧力からなる存在の敷居をちょっと低く設定してくれる。現代建築のそんなところが好きだなと思ったりします。

そんなこの建築は、普通は結び付けないなプログラムを結びつけて同次元で存在させていことがすごい。もうそれだけでこの建築はすばらしいわけです。実現したということがすごいんです!そして建築家がこの建築で提案しているものは、もうかたちだけでない状況にもあてはまるんだと思うんですけれども、そんな状況は今私たちが生活している現代都市においては当たり前に存在しています。それを建築家は発見し、建築プログラムとして提唱して、関係づけて表現してるんですね。この建築家がつくりだす建築は一見突飛なかたちをしているんですが、この建築家のもつ卓越した力強く説得力のある言葉の説明によって、それがほんとうは現代なんだよということを伝えてしまっていることにあるのではないかと思います。この建築家はそんなプログラムの構築を魅力的な造形で美しくしかもロジカルに表現できているということなんですよね。やっぱ、すごい!

建築:カーサ・ダ・ムジカ

設計:OMA

建築作品をみた雑誌:a+u (p94-119

建築のある場所:ポルトガル、ポルト

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