丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・丸亀市立図書館~都市・建築・芸術の対話によって生まれた美術館~

この建築は、香川県丸亀市にある、市立美術館と図書館です。この美術館の目玉はなんといっても常設展示されている日本の現代美術の先駆者、猪熊弦一郎画伯の作品群。これらは画伯が故郷である丸亀市に寄贈されたものです。

敷地はなんと丸亀駅の駅前広場。当時鉄道が高架化されたことによって空地となった駅前はその周辺は再開発中でありました。その当時ではかなりめずらしい立地であったと思います。大体は美術館って静かな場所にありますからね。特に地方都市だとなおさら。いい駅前空間ですよね。まずこの建築を見たとき、建築とその周辺がとても素敵に構成されているということが印象的でしたね。駅を出て街を見ると、シャープな四角い門みたいな美術館がお出迎えですよ。うれしいですね!

駅前に美術館を建てる発想。それはいくつか候補があったものから画伯がこの敷地がいいね!と希望したようです。静かな場所でなく、にぎやかで動きがある場所に建てたいと。この考え方好きですね。ちょっと立ち寄る。買い物のあとによってみようか。その日常の一部に非日常を貫入するような、楽しげな美術館を目指したかったのでしょうね。

そしてのこの門のような建築のファサードには画伯の絵画が展示されています。これは何十枚とある画伯の作品から選ばれたものを原寸大に引き伸ばして、そしてご本人によって手が加えられ、白い大理石に刻み込まれています。子供が描いたような遊びごころある絵画は広場に親和性を生まれていて、この美術館を特徴づけるものとなっています。いやあ、私はこの建築家の門構えの意匠がとても好きですね!美術館は襟を正してみる。という印象をなくして、人々に対してやさしく招き入れる敷居の低さをこの建築は提案しているように感じます。

そしてさらに壁画の前には駅前広場と一体となった美術館テラスがある。そしてそこには画伯による鮮やかな立体オブジェが置かれ、これらが駅前広場と内部空間をゆるやかに結びつけています。この表現が駅前広場のひとつの大きな要素となって空間をつくりあげていますね。

この駅前広場は、ランドスケープアーキテクトの第一人者であるピーター・ウォーカーが手掛け、美術館の前庭として、このアプローチをつくりあげています。駅前広場の空間を、建築と周辺環境の「間」の空間としてうまく活用することでこれら建築空間を成り立たせていますね。材料の配置等、どのように駅と建築をつないでいくかということ。そのアプローチは建築とはまた異なる視点からなっていて私としてはとてもおもしろくそして興味深いものとなっています。もっとランドスケープデザインについても勉強したいな!と思ってきました。空間を創造するのは建築だけではないわけですね!大体の駅前の広場というものは均一な空間で面白くない、特に地方都市の駅前広場においてもその傾向が顕著です。ちなみに私の地元の駅前空間もつまらない感じになっています。

この美術館とその周辺の総合的なデザインは、都市空間が一体となり、街にある種のオリジナリティが生まれているような気がしました。

さてさてメインの美術館へ!自然光を取り込んだ軽快で開放的な空間が広がる館内は、1階から3階まで3層により構成されています。1階にはミュージアムショップ、2階には対照的なプロポーションをもつ2つの展示室があります。さらに3階には豊かなスケール感をもつ展示室。この常設展示室は、2層吹き抜けの空間となっていて、上部に水平に連続するハイサイドライトがあります。この光が降り注ぐシンプルな大空間には、立体的で多様な現代美術の作品が展示されています。

もどって2階のアートセンターは、美術に関連する書籍・雑誌が閲覧できる美術図書室、講演会やコンサートの会場となるミュージアムホール、そしてワークショップ等を行う造形スタジオを備えています。美術鑑賞だけにとどまらない芸術に対するアプローチをこの美術館で体験することができます。

3階にあるカスケードプラザとレストランもまた気持ちいい。美術館の内部構成は、作品を効率的に見て回るために回遊式の動線として計画されていますが、巡回してきた終わりに、屋上広場の壁にあるカスケードの水音や空への抜けた屋上広場がパッと現れるのはとてもいいですね!美術作品をじっくり鑑賞した後の自然の空と水に、ほっとした充実さのようなものを与える演出となっています。訪れた人にやすらぎを与えてくれますね。

そして1階から屋上までを半屋外空間でつないでいるこの階段も印象的!上がっていくにつれて、幅が変化する大階段にはトップライトからの光が明るくドラマティックに採り入れられています。その階段に導かれるように2階の美術図書室、スタジオ、などにつながり、さらに上にあがると屋上広場につながっています。まっすぐ屋上へと視線をつくりながら、メインエントランスとは別に小さな扉が美術館への入り口となっていて、内部の回遊性とは異なる空間を展開しています。そしてこれらの空間を構成するうえでは、さまざまな素材が検討され用いられています。それをふまえたディテールがより強い作り手の理念を伝え、その緊張感と繊細さが建築の美しさを高めています。

この美術館は猪熊弦一郎画伯と建築家との対話を重ねながら、これらの設計は進めてきたそうです。その対話を通して建築家は、都市空間、建築、美術が一体となった建築を目指して設計を行いました。そしてランドスケープデザイナーや多くを調整した都市計画家の力をかりながら、市民が自由に訪れることができる公共施設、都市スケールをもつ公共空間をあわせもった媒体を建築によって結びつける、それが都市空間の一部となって人々をおいでおいでと招くような空間をつくりあげたのですね!

建築:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・丸亀市立図書館

設計:谷口建築設計研究所

建築作品をみた雑誌等:ja谷口吉生、建築を見る谷口吉生「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・丸亀市立図書館」(編著:古谷誠章、彰国社)

建築のある場所:香川県丸亀市

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする