善照寺本堂~極楽浄土への建築意匠~

このお寺は地下鉄銀座線田原町駅からほど近くにあります本願寺派の寺院で多くの人がにぎわう合羽橋商店街のすぐ裏手にあります通りからそっとのぞくと、住宅に挟まれ通りから奥まった木陰に切妻屋根の本堂がひっそり静かに建ちながら、訪れる人たちをむかえてくれているようです。ありがたいです。

この建築、なんか独特で不思議な存在感があります。お寺の形状をベースにしながらも、1958年に建てられたわりにはなぜかどこかモダンで存在感のある佇まいをもった印象を受けますね。う~ん、モダンとはちょっとやっぱり違うのかな。日本建築がベースにあり、モダンではあると思いますが、どこの国の建築か分からないような未知な感じ、不思議な雰囲気を醸し出しています。不思議を連呼してしまいましてすみません。しかしながら何かこの建築家の作品は、時代とは一線を画した独特なものがあるんですよね。

さて、建築に進んでいきます。表通りからのアプローチは、通りから入ると両側に笹が植えられている細い路地が本堂まで続いています。建物を見ると、建築を見上げると軒先が深く、勾配の緩やかな切妻の大屋根がまず目に入ります。そして左右対称シンメトリーで均整のとれたファサードと装飾を抑えた端正なプロポーション、その姿は凛とした佇まいをみせています。正面壁面には奥まった黒い開口部がきれいにおさまっています。モダンという言葉はこの開口から感じるような気がしますね。

中央には、大きな敷石から本堂へと続く宙に浮いた石の階段があります。本堂は高床式になっていますね。外部壁面の平坦な表面仕上げとは対照的に石の階段の小口面は粗く仕上げられ、御影石としての存在感を際立っています。神聖な場所へ向かう緊張感が伝わってきます。階段を上がるとたどりつく回廊は、極めて薄い床の回廊となっていて、キャンティレバーによって支えられながら、本堂をぐるりと取り囲んでいます。床が跳ね出されているため、見た目も軽やかに見えます。本堂は地面から1mという数値以上に浮き上がっているような感じがして、そして本当にまるで浮いているようです。回廊には古風でありながらも現代的な意匠の黒色の手摺がもうけられています。細かい意匠ディテールも不思議なこだわりを感じますね。意匠的に建築を高尚にしている要素になっています。これらせいか、石階段を登り回廊へ上ると、地面から1m程しか上がっていないのに、世俗から切り離されたような心持になります。何かこう身が引き締まるというか。このレベル差と浮遊感ある意匠が結界をつくりあげているかのようです。不思議です。

本堂内部は屋根形状がそのまま天井となり、独立した6本からなる八角形柱が外陣を構成し格子の大きな障子から差し込む光が柔らかな明かりに包まれます。小さいながらも寺院建築簡素で静謐な空間がどこか知らない世界へとひろがりながらもその建物内部に凝縮されています。世界観が空間に宿っているという言い方が正しいかもしれません。

建築家のもつ独自の思想が、極楽浄土そのもの表象した建築としてそこには存在しているようです。もっとこの建築家のことを知りたいな。そう思わせる作品ですね。

建築:善照寺本堂

設計:白井晟一建築研究所

建築作品を見た雑誌等:白井晟一(鹿島出版社)、白井晟一の建築Ⅳ(めるくまーる)

建築のある場所:東京都

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