青森県立美術館~遺跡を発掘するように美術の魅力を発見!~

この美術館は、巨大縄文集落跡である三内丸山遺跡の隣に建っています。この遺跡の発掘はこれまでの縄文時代に対する様々な説が覆された重要な遺跡ですね。この遺跡のことはもちろん私も知っています!

青森という場所性をいかに建築で表現しうるのかが計画において問われていたこの建築のコンペ。最優秀案となったこの建築家が出した提案は、まるでトレンチのような空間。そのヒントは三内丸山遺跡の発掘現場から着想を得たとのこと。発掘現場のトレンチのように、地面が幾何学的に切り込まれていたのです。そしてその上から白く塗装された煉瓦のボリュームが覆いかぶさり、そのかみ合わせで生じる隙間の空間がいいですね!青森のとても魅力的な場所となっています。

さてそのアイディアのきっかけは何だったのか。それは発掘している現場そのものを美術空間にすることはできないか!と建築家が考えていたとき、以前見学した、遺跡の発掘調査を思い出したようです。地面を碁盤の目のように切って掘り下げて、地層が場所によってどうなっているかを調べる方法であるトレンチ。その掘られた部分、トレンチの溝にあたる部分を美術館の空間としてやろうと考えたわけです。その空間は、敷地内部にその周辺の状況がランドスケープとなってつながっているんじゃないかと思わせる印象的なものとなっています。青森という場所、三内丸山遺跡という場所が隣にあるということ、それはこの敷地の大きな場所性になると建築家は考えたわけですね。そこからこの美術館の売りとなった「土の展示室」が生まれたわけです。こういう遺跡みたいな建築を新たにつくるという発想と表現は面白いなあ!

そしてもうひとつ建築家がこの美術館を提案するうえで考えたことがありました。それはこの地方都市において、首都圏にいくつもあるようなホワイト・キューブ型の美術館をあまり意味がないのではないか。お客を呼べないのではないか。ということでした。美術という表現が今ではより多様になってきているなかで、その展示空間が芸術家にインスピレーションを与えることが現代のアートにおいては大切であるし、それが青森独自の文化の発展につながっていくのではと考えたわけです。もちろん、上の構造体の中もホワイトキューブ型の展示室はつくっています。白い箱のに設けられたホワイトキューブ型展示室と、土の床や壁が露出する隙間の「土の展示室」。そこの美術館はその二つの空間が、対立しながらも共存する空間という面白い関係性をもったものとなったわけです。構造体の中のホワイトキューブから出たら、次は土の空間に移動するというように、土の空間とホワイトキューブの空間を交互に体験できるわけです。

この土の展示室、置く展示物が美術品になるということで、どうその空間を実現に結びつけるかは苦労があっただろうと思います。もちろん、トレンチの空間をそのままもってくるようなことはできません。美術館に必要となる性能条件を満たさないといけません。壁は土をベースに配合したコンクリート面に吹きつけを行って、乾燥する前に削り取るという作業を行うことで、土壁のような空間をつくっています。床には日本をはじめの土があるところでは使われてきた構法である、三和土(タタキ)を参考に検討が進められました。昔はどの民家にも見られ、土と生石灰、場合によってはにがりを混ぜてつくるものです。ただ、美術館の床になりますから、そこに作品を置くことを想定しながら、土のような質感を与えながらコンクリートのもつ強度も確保するという検討が行われたわけです。

そんな土の抽象化した空間でありながら、トレンチという発掘現場を思わす具象的な空間。シャガールの大きな舞台背景画が展示されているアレコホールは、その大空間が何かまるで内部にいるようで外部にいるような不思議な大らかさがあり、遺跡のなかから絵画を発見するような体験を生み出しています。今度訪れるときはどんなアートを土の展示室を歩きながら発掘できるか!青森の生む魅力を発掘できるか!とても楽しみです!!

建築:青森県立美術館

設計:青木淳建築設計事務所

建築作品を見た雑誌:GA JAPAN 82p8-27

建築がある場所:青森

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする