神奈川工科大学KAIT工房~林の中を歩くような建築~

この建築は、学生が自主的に創作活動するために建てられた大学の創作工房です。この施設は休みの日には地域の子供たちにも開放されているようです。このワンルーム空間のいろいろな場所で木工や金工、陶芸など様々な創作に関する活動が行われています。レーザー加工機・モデリングマシンなども置かれていますね。いいな~。工房スペース^^。

そんな建築ですが、透明なショーケースのような外観となっていまして、キャンパス内にポンと置かれている。そんな印象です。いやそうみえる意匠となっていますといったほうがいいですかね。外壁は出入口以外はすべてガラスとなっていて、外との段差もほとんどなく、建築内部と外部とがつながってみえます。だからショーケースがポンと置かれているようにみえるんだな。

内部空間は細い柱がバラバラとたくさん立っている壁のない空間となっています。屋根にはストライプ状のトップライトが設置されていて、自然光が木漏れ日のように空間内部にあふれる外のような中のような空間となっています。柱はきわめて細くて、空間を規定する絶対的な存在ではもはやなくなっているため、柱がまるで林にある木や植物のようです。まさに人工的な林のような空間がそこにはあるわけです!建築家も林の中を散策するようなイメージでこの設計を進めていったとのことです。向こうまで見渡すことのできる空間をうろうろ歩き回ると、均質的に見える空間の中にも空間のまとまりがいくつか存在しているのがわかりますね。けもの道のように通路のような空間から、進んでいると突然大きく空間が広がるみたいな。でもいきなり目の前に柱があったりとかという状況もありえそうだな。林をあるいていて不注意で木にごちんとぶつけてしまうように。これ、学生の誰かは柱にぶつかっているでしょう(笑)。一見、均質な空間の中に林のもつゆらぎのようなものが生まれていて、それはそれはとても曖昧な空間の境界をつくりあげていますね。

この空間を特徴づけている細い柱はランダムに配置されています。平面図で見てみるとそれはそれは星座のようできれいです。つまり細い柱のみで構造が構成されているということなのです。具体的に言うとこのおよそ2000平方メートルくらいある建築の中に、柱は全部で305本あります。その中で柱の役割は、鉛直力を受ける柱と水平力を受ける柱の2種類に分けられています。柱の断面形状はほとんど全て異なっていて、すんごく薄い柱もあれば、すんごく細い柱もあります。それぞれの柱で力を受ける役割がちょっとずつ異なるということですね。空間の曖昧さが構造体からも徹底されています。

その徹底した柱の配置・寸法の検討を空間をつくりながら配置する作業には、様々な縮尺で模型をつくって、柱という要素を使って様々な空間(通路的なとか部屋的なとか広場的なとか)をつくっていったわけです。何度も模型での検討を繰り返すうちにぼんやりとこの配置しかないというあるバランスにたどりついた。「これだ!」と。スケッチを書き続け、莫大な模型をつくりつづけ、そのなかで感じた感覚的な「これしかない!」論。そのバランスを設計というかたちにおとしこむ作業はたいへんだったでしょうね。そして手描きでは何となくできても、それをCADで描いてみるとちょっと違うし、みたいなことの繰り返しだったと思います。それをうまく関係づけることができるように、プログラマーの人に協力してもらって、このプロジェクト用のCADを専用でつくったとのことです。ランダムに決めていそうな柱の配置は建築家の感覚という厳密な決定がなされ、他者がみるとその配置の意図は構造なのか、計画なのか、設備なのかわからない。根拠のあいまいさが、林という自然の状態に似ている。ただなんとなくわかるのは、その人が歩いて場所をつくるという空間のバランスとその先を絶妙に調整しているんです。

そして空間に配置されている観葉植物の緑や以前から使っていた古い家具や機械がこの抽象的な空間におかれています。まるでそれはコンピューターグラフィックでつくった空間が実際に現実化しているような感じに見えます。何かですね。白い空間をCGでモデリングして立ち上げて、それからフォトショップで家具や人や植物の画像をポンポンと別レイヤーでコラージュ配置したみたいなんですよ。より空間が抽象的にみえるというか。家具の裏側が隠すものがなく。これでいいのかと立ち位置に困っている感じもします。ほんとうに「はい、ぽんっ」と置かれています(笑)。そんななんとなくも場当たり的に置かれて構成される空間が不思議で面白くもみえます。まあ確かに林の中のような空間ですからね。林にいきなり机を配置して座ってみても変な感じですよね。使っていくうちに自分たちなりに配置を考えていきなさいといった環境が与えられています。でもそれは何となく大学キャンパス内なら、大学なら成立しそうな空間な気がします。でもおそらく誰か使っているうちに、地面に図面、つまり間取りを描くことになるでしょう。子供のころに地面に描いたりして遊んだ記憶はありませんか?私はやりました(笑)。ぜったいそんな学生もいるはず!

建築:神奈川工科大学KAIT工房

設計:石上純也建築設計事務所

建築作品を見た雑誌:新建築20083月号p58-73

建築がある場所:神奈川県

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