フィッシャー邸~キューブの重なりが生んだ深い住宅概念~

アメリカ、フィラデルフィア中心部から30キロほど北上した静かな住宅地にこの住宅はあります。

木々が生い茂る林のなかに、木箱のようなキューブ型の建築が2つ、斜めに角度を振って重なりあうように配置されて建っています。杉材板張りの外壁で構成された幾何学的な形態がとても美しいです。

建築を構成する2つのキューブは、人が交わり集まるパブリックな部屋群とプライベートな部屋群と明快に分けられています。北側はリビングやダイニングを集めた「リビング・キューブ」、寝室を集めた南側の「スリーピング・キューブ」と呼ばれ、その美しいキューブの斜めによる傾きは、光・眺め・道路の要素がこの住宅の明快なプランニングと形態をかたちづくっています。角度を振ったそれぞれの面に建築が向くことによって、異なる眺めや光をとりいれることができ、部屋に適した眺めや光によって決定されているのです。リビングは、東面と西面に窓があり、朝と夕方の光が入りこみます。これらは、東から南東側へ向き、林の眺めを得ながら、朝の光に満たされる空間になります。

敷地の北東側に開口を大きくとっているのは、流れる小川とその奥に広がる林の風景に開くためのものです。逆に道路面に対しては深く切り込まれたスリット状の深い影が落とされた窓として、閉じています。

キューブが重なりあう位置には、2つの空間をつなげ結ぶようにエントランスホールがあり、それぞれの空間を介在する役割をなしています。玄関は「スリーピング・キューブ」側についていて、その扉を開けると、北東側の林へまっすぐに視線が抜けるように開口がとられています。そして斜めに振られている部分からは、リビング、暖炉、その奥にあるダイニング、外の景色と視線がのびていき、奥行きのある空間を感じることができます。45度に空間を振ったことでできるその重なりとつながりが内部に豊かな奥行きと相互空間の関係性を生んでいます。

「リビング・キューブ」は2層分の大きな空間からなるリビングが主な空間となっています。そのリビングにある大きな開口部には、窓と一体となったベンチがあります。これいいですよ~。身体よりひとまわりだけ大きなコーナーウィンドウはこの部屋と庭への広がりをもたらしています。建築家の部屋のなかに部屋をつくるという考え方がかたちになっていて、この建築空間の核となる要素のひとつとなっています。そして暖炉もこの住宅には重要な存在。地元産の安山岩の乱積みによってつくられた暖炉は、すごい存在感がありますね。遺跡の柱が住宅を貫通しているかのようです。半円筒状の暖炉は、リビングとダイニングとの中心から少しだけずれた位置に立ち、20度振って配置されています。そのせいかより存在感を感じますよ。規律正しいプロポーションでつくられた空間の中の異物感が空間の中でフォーカスされて、空間全体の重心を絶妙にずらしています。

この建築は、家を人が住まうための空間概念とするルイス・カーンの哲学が純粋にかたちとなって表現されています。私がとても好きな建築のひとつです!実物は見たことありませんが、施主によって大事にメンテナンスされたこの住宅は、写真ではとても美しく保たれているようでした。今はどうなってるんだろうな~。

建築:フィッシャー邸

設計: ルイス・カーン

建築作品を見た雑誌:Louis Kahn Housesa+u 20092月号

建築がある場所:アメリカ

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