牧野富太郎記念館~自然環境を形に変換し共生する~

この建築は、高知に生まれ日本植物学の基礎を築き上げた植物学者、牧野富太郎博士の膨大な植物標本と書籍を収蔵研究するとともに、世に広く紹介するための研究施設であり展示施設です。

敷地は、高知市中心市街地から南東に行った郊外、五台山の山麓に広がる牧野植物園に隣接します。この植物園は牧野博士の業績を讃える目的で、1958年に開園しました。そして五台山は、高知市民ならだれでも一度は登ったことのあるというほど、市民に親しまれている山です。そこにこの建築は、山の斜面にまるでぴたっと虫が木にへばりつくように建っていて、周囲の森林に溶け込んでいるかのような有機的な屋根が特徴的です。

建物は敷地の関係で本館と展示館に分かれています。それをおよそ170メートルもの長い回廊で結び、屋根によって一体的な配置になっています。樹林の中に垣間見る自然に抜けた、屋内と屋外が連続した一体的な空間は気持ちよさそうですね!

高知市は台風銀座といわれるほど過酷な気候条件のある場所です。そして建物は山の上にある。太平洋からくる潮風はまず五台山に当たるといわれています。雨にしても降るとものすごい豪雨になることが多いそうです。敷地条件はなかなか最悪です。。そういうわけで、基本的に建物の配置は、できるだけ造成を少なくして自然地形を使って伏せる形となっています。庇もとにかく木よりも低く下げてもいます。山にへばりついてみえるのはそのためか。

そして山の上という環境に加え、台風が多く来る高知という土地の性質上、巨大な風圧に耐えることのできる屋根は、この場所に建築するうえでは絶対に必要な条件となります。そこで建築家は、地形に合わせるように架構を検討し、山に起こる風圧を受け流せるような屋根の形状を考えたわけです。

この形状にいたるまでは、風洞実験によっていろんな風の状態を解析して検討したそうです。風の気まぐれさを建築でとらえるのは困難を要したことでしょう。この形態は、場所の風の流れを考えるなかから発想されたものなのです!そして同時に五台山の尾根にきれいに目障りなく配置して建物を周囲の環境に溶け込ませるようにするか。それを意識しながらその作業を積み重ねることで五台山のランドスケープを尊重するものにもなっています。

建物の中庭には水盤がはられ、その上を風が渡ると、気化熱で外部の空気が冷やされ、クーリングの役割を果たします。中庭を囲い込むコの型に配置された屋根の下は、木造集成材の巨大な屋根架構に覆われた、木の力強さが立体的に溢れるダイナミックな空間となっています。高知県はほとんどが山林です。県より、ぜひ木材を建築につかってほしいとのことで、積極的に採用していました。集成材は全部で426本あるとのこと。それがぜんぶ角度が違って長さが連う。もちろんジョイントの位置も違う。不定型のうねった三次元で構成された屋根はり実際につくるのはたいへんだったろうな!現場でつくっている人たちの苦労を想像すると頭がさがります。

今は竣工時周りに植えられた樹木がだいぶ茂っているようです。建物がだんだんと森の中に隠れていくのがいいですね!樹木が育てば育つほど、台風がきても大雨が降っても建築を覆う森林によって、もっと耐えられるものになるだろうとのことです。

地産材の活用と自然環境との共生が、造形として表現されながら環境を育む建築。森で覆われた立面のないこの建築は森の中にに息づいています。地形や場所の条件に呼応しながらつくられたこの建築は牧野富太郎という植物学者の理念に通じた風景をつくっています!

建築:牧野富太郎記念館

設計:内藤廣建築設計事務所

建築作品を見た雑誌:新建築20001月号p86-101

建築がある場所:高知

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