那珂川町馬頭広重美術館~自然と溶け込むルーバー建築~

那珂川町馬頭は、栃木県那須郡の南に位置し、周辺には美しい里山、そして水田が広がり、山間で温泉が湧き、町を流れる那珂川に天然の鮎が泳いでいます。このようなすばらしい場所に美術館ります。海外からも多くの見学者が訪れるそうです。

美術館を設計したのは、2020年東京オリンピックに向けて新国立競技場を設計する建築家隈研吾!この建築はその代表作のひとつですね。さらに言うとこの作品は建築家の以後の作風に大きい影響を与えた作品であると私は思います。

美術館に収蔵しているのは当時隣村であった熟田村出身の肥料商・青木藤作が大正から昭和初期にかけて収集した、四〇〇〇点以上もの美術品。この青木コレクションと呼ばれている美術品の数々は、馬頭町(現那珂川町)の美しさに魅せられたご遺族が平成9年に寄贈したもので、それらのための美術館が設立されることになったわけです。これらの美術品の中でも主役は浮世絵師・歌川(安藤)広重の約50点ほどの肉筆画と浮世絵!

これらをおさめる建築はどうようなものかというと、ルーバーで覆われた切妻型の大屋根が特徴的なシンプルな形態の建築。それが東西に長くゆったりのびた平屋配置となっています。その建築はカタチがありながらも自然豊かな那珂川町の景観に溶け込むように存在しています。その内部は広場が貫通していて、町役場前の広場と美術館の裏山の散策路とが広重街道と接続され、敷地のなかにみちをつくり、まちの中に新たな流れをつくりあげています。広重街道の東側にある美術館機能、西側には地元の食材を提供するレストランと、特産品を販売する売店機能が、庇からなる街道空間によってつなげられ、美術館が町に対して開かれた地域密着型の美術館となっています。

このルーバーで覆われた特徴ある形態、いや表情のある建築とでもいいましょうか。この意匠は広重作品がもととなって生まれたアイディアなんです。広重作品は、光や風、雨や霧など、絶えず変化する自然の状態や変化を描き留めることに特徴があります建築家は、広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」という作品からインスピレーションをうけて、設計を進めたとのことです。 そのルーバーがつくりあげる空間の繊細で曖昧な表情は、細い線や点によって自然を表現した広重の絵からびびっときたわけですね。広重の描く雨の絵のように建築を粒子化して周辺に溶け込むような建築にできないか!それを地元の木材によって実現できないかと!

そこで建築は30×60ミリの断面形状をもつスギ材のルーバーのディテールから全体に発展していったようです。美術館全体は、地元産の八溝杉によるルーバーに包まれており、これらの連なりは光の入り込み具合で透明になったり不透明になったり、さまざまな表情を見せてくれます。しかしながら繊細なスギ材を繰り返し配置するというやりかた、特に屋根部分については苦労があったようです。この敷地における法律では、屋根を不燃材にしなくてはいけません。実現するためには、その細い杉材を不燃化するという厳しいハードルがあったわけです。ルーバーで屋根をつくるということを実現するうえでたいへんに困難を要しました。解決法としては、木材に特殊処理を行い、実験検証を重ねて大臣認定をとったとのことです。この技術によって、従来の木材の不燃処理とは異なるより自然に近い木の質感を獲得できたとのことです。その苦労もあって、広重の作品とこの建築が、絶妙にあってます!広重の世界観を表現しています!!

他にも内装には、地元産材がふんだんに使用されています。床等に使われている石は、地元の芦野石。壁には烏山和紙というものが使用されています。スギ材には、烏山和紙が巻かれており、柔らかな光が神秘的で幻想的な空間を演出しています。そしてオープンギャラリーからの眺望もすばらしい展示となっています。自然豊かな山、美術館と山の間にある、竹林と庭。北側にはえている孟宗竹がこの建物の線的表現ととてもマッチしていますね!自然と溶け込む建築はその材料とディテールの追及によって、カタチこそ建築は存在していてもその場所にすっとなじむことができる。そのすばらしさを感じることができる建築です!!

建築:那珂川町馬頭広重美術館

設計:隈研吾建築都市設計事務所

建築作品を見た雑誌:新建築200011月号p112-122

建築がある場所:栃木県

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