テルメ・ヴァルス~石の積層からなる神秘的な洞窟風景~

山々に囲まれたスイス中央部の谷あいにあるヴァルスという小さな村。このヴァルスはアルプスの美しい山並みの奥にある温泉地であり、テルメ・ヴァルスという建築は、そのヴァルスの谷、斜面にある温泉施設です。テルメ・ヴァルスは建築家ピーター・ズントー のストイックなまでの仕事によって人口わずか1000人の小さな村を世界的に有名にした建築です!

建築を見てみると、それは石からなる洞窟のような建築、山の風景に溶け込む建築という形容があてはまります。

外観は上部は草に覆われていて小高い丘と同化しているようにみえます。あらわれる開口は地層のようにも感じられますし、石が丘に挿入されているようにもみえます。そして開口はまるで山の斜面にある洞窟ようです。それはこの建物をふくめた風景が昔から存在していたのかのようです。斜面をえぐり抜いたような洞窟空間からは山の自然の風景がみえます。

内部は外観の印象とは異なり、複雑なつくりとなっていて、さまざまな空間体験ができます。格式立っていない浴室空間のレイアウトは迷路のようで、入浴者がそれぞれの地点を探り歩く楽しさをもっています。温泉の温度によって、大小さまざまな部屋に分かれており、空間の誘導もなされています。空間が石の塊でできているようで連続した洞窟の中を進むような空間もあります。温泉は地底湖のようですね。

そんな石の幾何学的な洞窟のような空間からは、スリットからの光がさらに空間を神秘的で幻想的な雰囲気としています。山の美しい景観を取り込み、外からスリットをとおして差し込む光が水面に輝く風景や、岸壁や断層を想起させる温泉というよりもはやそれは湯殿です!眺望と洞窟の対比された空間がとてもすばらしい!!

とにかくそう思えるほど石という材料が密実につまったようなこの石塊のような建物は自然石の積層でできており、自然石の積層によって成り立っています、その石とは地元ヴァルスの片麻石。敷地から1000メートルのぼったところにある採掘場でとれた石を敷地まで運んで斜面に一段一段積み上げてつくられているんです!均一に積層された石の壁は一枚の岩のようです。この層を重ねることでできた表層の素材感は密実な表情をつくり、その空間の連続がまさに洞窟のような場所をつくりあげているんですね!

山の石からの神秘的な空間、闇と光、水面におちるきらめく光、湯気をとおりぬける光の拡散、暖かな温泉による石のあたたかさとふれあい、石に囲まれることで響く水の音。訪れる人々はそんな静謐でくつろぎのある入浴体験をとおして自らを清めています。

建築家の空間や使用する素材とその使い方へのこだわり、また信頼をおく職人にしか施工させないといわれるストイックな建築に対するこだわりは、建築家というより建築マイスターと称したほうがよいでしょう。多くの建築家に彼がリスペクトされる理由がとてもわかる建築です。世界から素晴らしいと絶賛される空間というのもうなずけますね!

建築:テルメ・ヴァルス

設計:アトリエ・ズントー

建築作品があった雑誌:a+u ピーター・ズントー

建築のある場所:スイス、ヴァルス

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