風の丘葬祭場~建築とランドスケープの融合による空間儀式~

風の丘葬祭場というこの建築は、建築とランドスケープの融合という言葉がとてもあっている建築ですね。

敷地をみると、南側には公園があり、西南側にはおよそ3世紀ごろの古墳跡が残されています。そして西側には既存墓地があります。建物の一部はすり鉢状の楕円の広場によって半ば埋められています。幾何学的に連続させることで、強く建築を意識させないような形態を目指したとのことで建築と敷地が周辺環境と絶妙な弱さとバランスで存在しているように感じます。結果的に、これらの建築群の鳥瞰写真をみると、何かの地上絵的なかたちを彷彿させているかのようです。そしてこのたたずまいはまた、今度鑑賞した内容を投稿しようと考えていたグンナール・アスプルンドの森の葬祭場と印象が近いなと感じました。

楕円の広場の中央には遠くの風の音を響かせるオブジェが配置されています。サウンドスケープも試みられている。ここには、ランドスケープデザイナーとの綿密な建築と地表面との関係性に対する検討の痕跡をみることができます。

建築自体をみていきますと、スギ板型枠のコンクリート打ち放しになっている建物は火葬棟、 中央のコールテン鋼の壁からなっている建物は待合棟 、レンガ積みの八角柱をしている斎場の三棟と二つの外部空間の構成からなっています。建物に入って中庭をみながら進むと火葬棟。通路をわずかに下ると視界は公園に開け、斎場と待合棟につながります。

エントランスポーチの中心をずれて配置されている象徴的な柱とトップライトは空間を象徴的に表現しています。エントランスポーチと火葬棟は、中庭に開いた半屋外的な空間で滑らかにつながっています。

斎場と待合棟への庭に開いた回廊は、壁、天井ともスギ板型枠の打放しコンクリートで仕上げられています。火葬棟と三角形平面の待ち合い棟のあいだの通路はレベル差があり、縦スリットから差す弱い光による動線空間は儀式性を帯びた演出になっています。

火葬棟は水庭の回りをめぐってつながる外への視線を閉ざした静謐な空間になっています。待合空間は、木の素材によって火葬棟の静けさに対比されて、やさしい雰囲気を感じることができます。周囲の待合室は、庭側へと大きく開かれています。斎場の庭側には地窓ととおして窓の外には水盤が設けられ反射光がゆらゆらと内部に映りこみます。

渡り廊下からホワイエ、待合スペース、告別の場、炉など空間はやさしく触れるように微妙な自然光が材料を伝って空間に入り込み、光の姿をつくりあげています。光の質に秩序をつくることそして細やかな材料とディテールの検討が、この静けさとやさしさ、厳粛さを生み出し、瞑想的な空間をつくりあげていると感じました。

人間の死を受けとめ、去り行く人、残された人の訣別の場所をどうつくるか。そこには考えを積み重ねた建築家による空間による儀式がつくりあげられています。

建築:風の丘葬祭場

設計:槇総合計画事務所

建築作品を見た雑誌:新建築19977月号p94-113

建築がある場所:大分県中津市

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